実際に会社を訪問して、帳簿書類を調査する税務調査は年15万件程度といわれています。全国の会社の数は、およそ270万件位なので、15万件は約6%となりますね。この数値を実調率(ジッチョウリツ)といいます。調査される確率は黒字の会社の方が高いですが、約7割を占める赤字法人にも税務調査は入ります。
税理士が申告書を作成しているときは、税務調査の事前連絡がありまして、調査官の日程のスケジュールを会社に問い合わせてきます。東京税理士会の実態調査では、事前連絡は94%となっていますから少し安心して下さいね。ただし、現金取引が中心の会社や年商がある程度の規模の会社では抜き打ちの調査もありますね。
設立して決算が3回以上終わってから、税務調査を受けることが多いようです。
実調率が6%ですから、実際は6〜7年に一度ということが普通です。
個人事業が会社になった、いわゆる法人成りの場合、個人の調査を受ける可能性があるのも、会社設立後の3年間です。また前回の税務調査から次の調査までは、3年以上間があくことが多いようです。
3月決算の税務申告は5月です。
決算から半年後の9月から11月にかけて税務調査が入るのが普通です。
7月は人事異動の時期で、6月中旬が事務の引継ぎの時期ですから、6月中旬から7月中旬にかけて税務調査は全国的にお休みになります。5月中旬からの税務調査は、事務引継ぎもあって比較的簡単に終わる傾向があるようです。なお、都心部を除き、個人の確定申告期の3月上旬は税務職員も総勢で個人申告のサポートに回りますから、税務調査は少ないですね。
儲かっている会社は税務署にとっても上客ですが、いろいろな会社が調査の対象になります。 第1段階は、形式的なミスです。計算ミスや添付書類が不適切なケースです。 第2段階は、還付法人です。消費税の還付では、簡便に書類のやりとりで済むこともあります。この程度の場合は、実際に会社まで訪問しないで、税理士事務所とのやりとりで済むこともあります。
本格的な調査、つまり実際に調査にお伺いするのは、次の4つのターゲットの会社です。
1.まずは、急激に売上が良くなっている成長会社です。でもその割には税金を余り支払っていない会社です。
2.資料せんなど、他の会社から税務署に提出されている資料を照合して食い違いがあるケースです。
3.多くの貸倒損失や損害賠償金など特殊な事情があれば、伺って事情を聞いてこいというわけで調査に来ます。
初日は10時からお茶を飲みながら会社の概要の聴き取りから始められます。貴社の事業内容や主な取引先等、ですから会社案内やパンフレット・カタログがあるといいですね。
また、10人以上の会社であれば組織図を調査官から求められることも多いです。なお、初回の調査では、社長個人の略歴、独立の動機、役員構成についても質問されることがあります。
社長個人の預金通帳の提示も求められることもあります。なごやかに誠意をもって協力的に応対するように心がけましょう。
初日の聴き取りは会社概要から取引の流れに移っていきます。取引の流れというのは次のようなことです。売上について、締日はいつか、回収はいつか、回収は現金・振込・小切手・手形かどうか、仕入について、締日はいつか、支払はいつか、支払は現金・振込・小切手・手形かどうか、給料についてタイムカードはあるか、締日と支払日などの聴き取りがされ、納品書・請求書・領収書の管理と記入者は誰かなどの質問がされますので、ここで経理担当者を紹介し同席することになります。
帳簿調査に取り掛かるのは、早くて初日の11時ごろですが、午後からスタートすることも多いですね。
低い応接セットでは帳簿書類を見るのに疲れますから、事務机やダイニングテーブルが喜ばれるでしょう。
過去3期分の総勘定元帳、売上に関する納品書、請求書、仕入に関する納品書、請求書、領収書、在庫表、人件費に関する給与台帳、扶養控除等申告書などすぐに出せるように整理しておきましょう。
最初の挨拶と会社概要の時は応対していただきたく思います。帳簿調査に入ってからは、経理担当者や税理士事務所で対応することもあります。
あとは、調査のとりまとめの段階ですね。2日目のだいたい午後3時から4時ごろに、調査のとりまとめの話があります。ここで「だいたい良いんじゃないですか」ということになれば嬉しいのですが、普通は問題点がいくつか指摘されます。その場でコレとコレを修正申告して下さい、で済んでしまうこともあります。もう数日お邪魔したいとか、税理士事務所を通じて資料を提出して下さい、ということもあります。このとりまとめの段階は、社長さんは是非とも同席して下さい。
誰にでも間違いはありますから、間違いを認める態度は大切です。けれども、この段階で税務署の判断に納得できない点があれば、はっきり社長さんの考えを主張してもいいと思います。
ありますよ。でも税務調査により、問題点がないものとして是認される確率は27%位です。少し前の資料ですが、平成18年度に調査を受けた約147,000社のうち是認された会社は39,000社だったのです。
73%の会社、だいたい4社に3社は税務調査により何らかの指摘があり、修正申告に応じたり、税務署により更正を受けています。
修正申告というのは、申告書の内容に誤りがあったときに、納税者の側から所得金額や法人税額を「増やし」て正しい申告にする手続をいいます。所得金額や法人税額を「減らす」のは、修正申告とは言いません。修正申告書は、自分が間違っていたことを認めることですから、言い換えれば「異議の申し立てはできない」ということです。
税務調査により指摘を受けた場合、修正申告に応じる割合は、実に97~98%となっています。
税務署の判断と納税者の見解が食い違い、妥協点が見い出せない場合、税務署の側から申告を訂正し、税額を追徴するのが更正(コウセイ)です。
税務署の更正に対しては、異議の申し立てをすることはできます。けれども、更正はいわば「喧嘩別れ」の感じがしないでもありません。修正申告に応じられないまま、税務署が更正する割合はわずか2~3%にすぎません。
売上や他の収入を除外した場合、会社の所得が増えますから、法人税が追徴されるのは納得できることですね。
けれども、売上を除外した分は、さらに社長のポケットに入ったものとして、それだけ所得が増えたものとして「源泉所得税」も同時に追徴します。ですからダブルパンチとよく言われるのです。
会社の費用の中に、社長個人が負担すべき支出が含まれているケースがあります。
例えば、福利厚生費に計上した夏の海外旅行58万円は、実は社長の家族旅行であったとか、会社の事務所の床の修繕費42万円は、実はご自宅の塀の修理代金であることが発覚したような場合です。
認定賞与の論理というのは、ポケットに入れて私服を肥やし、いい思いをしているということです。
けれども、今時の社長さんはポケットが膨らんでいないのです。どういうことでしょうか。出来心からひとときポケットを膨らませてしまっても、たいがいの会社では社長がまた資金をつぎ込んで返してしまっているんです。
特に、経費が認められないで社長の個人的な支出とされた場合でも、社長からの借入金、自分が出した資金と帳消しにすれば済むのですから、借入金と相殺したいと主張することにより認定賞与は勘弁していただくことは賢明な選択です。
それが結構多いんです。重加算税は、申告の仮装や隠ぺいに対し、ペナルティとして35%を加算するものです。
仮装や隠ぺいは、売上除外や領収書の改ざんによる架空経費の否認が代表例です。